2026年8月01日

【この記事のポイント(要約)】
「下げなくていい」は誤り: 最新医学(日本動脈硬化学会等)では「LDLコレステロールはリスクに応じて下げるべき(Lower, the Better)」が世界基準のコンセンサスです。
久山町研究が証明: 日本人のデータでも、悪玉(LDL)コレステロールが高いほど心筋梗塞などの発症リスクが明確に上昇します。
健康寿命への影響: 脂質異常症を放置して心血管疾患を発症した場合、健康寿命(元気に自立して過ごせる期間)が約3.5〜5年短縮すると報告されています。
当院の対応: 百合ヶ丘つだ内科心臓不整脈クリニックでは、頸動脈エコー等の精密検査を用い、一人ひとりのリスクに合わせた適切な脂質管理を行っています。
こんにちは。百合ヶ丘つだ内科心臓不整脈クリニックです。
健康診断で「コレステロール値が高い(脂質異常症)」と指摘された患者様から、診察室でよくこのようなご質問をいただきます。
「ネットや本で『コレステロールは下げなくていい』『薬は飲むな』と見たのですが、本当ですか?」
「症状もないし、できれば薬は飲みたくないのですが…」
健康情報のあふれる現代、何を信じればいいのか迷ってしまうお気持ちはとてもよく分かります。しかし、循環器内科の専門医として結論から申し上げますと、「コレステロール(特に悪玉であるLDLコレステロール)は、リスクに応じて適切に下げるべきである(Lower, the Better)」というのが、世界中の膨大なデータによって確立された現代医学の動かすことのできない事実です。
今回は、なぜ「下げなくていい」という説が出るのか、そして高コレステロールの放置が具体的にどれくらい「健康寿命」に影響を与えるのかについて、日本人の貴重な疫学データである「久山町研究(ひさやまちょうすたでぃ)」や最新の医学的根拠を交えて分かりやすく解説します。
1. なぜ「コレステロールは下げなくていい」という説が出るのか?
「下げなくていい」という主張の背景には、データの誤解や古い解析手法による偏った解釈が存在します。Google等の検索でも散見されますが、医学的には以下のように説明がついています。
①「高齢でコレステロールが高い人の方が長生き」のからくり
がんや重い持病、栄養失調などで体が弱っている方は、結果的にコレステロール値が低くなります(これを医学的に「逆の因果関係」と呼びます)。「病気だから数値が低い」状態の人々のデータが含まれているため、見かけ上「高い人の方が元気にみえる」という統計上の誤解が生じるのです。
②「総コレステロール」で一括りにしてしまう誤り
昔の古いデータでは、善玉(HDL)も悪玉(LDL)も混ぜた「総コレステロール」で評価されていました。しかし現代医療では、「血管を傷つける悪玉(LDL)コレステロールをいかにコントロールするか」が重要であることが完全に判明しています。
2. 日本人のデータ「久山町研究」と最新医学が証明する真実
「欧米人と日本人では体質が違うのでは?」という疑問に応えるのが、福岡県久山町の住民を半世紀以上にわたって追跡調査している世界的な疫学研究「久山町研究(Hisayama Study)」です。
久山町研究をはじめとする日本人の集団追跡調査や、近年の遺伝子レベル・大規模臨床試験から、以下の事実が完全に証明されています。
① LDLコレステロールが高いほど心筋梗塞リスクが上昇
日本人のデータにおいても、LDLコレステロール値が高くなればなるほど、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患の発症率が明確に上昇することが実証されています。
② 高血圧・糖尿病・喫煙が重なるとリスクは「掛け算」で跳ね上がる
久山町研究では、コレステロール値だけでなく、高血圧や糖尿病、喫煙などの危険因子が重なることで、血管事故を起こす確率が足し算ではなく「掛け算」で跳ね上がることが分かっています。
③ 最新医学のコンセンサス「Lower, the Better(低いほど良い)」
近年の大型臨床試験や遺伝子解析(メンデル遺伝無作為化研究)により、LDLコレステロール値をしっかり下げるほど、心筋梗塞や脳卒中のリスクが下がり、血管内のプラーク(ゴミの塊)が小さくなることが判明しました。
現在では、日本動脈硬化学会(JAS)をはじめ、欧州(ESC)・米国(ACC/AHA)の主要な循環器学会すべてにおいて、リスクに応じた「Lower, the Better」の管理方針が合意されています。
3. 具体的にどう影響する?高コレステロールと「健康寿命(3〜5年の差)」
コレステロールが高い状態(脂質異常症)の最大の怖さは、「どれだけ数値が悪くても、まったく痛くも痒くもない(サイレント・キラー)」という点です。
しかし、症状がない間も血管の内側では静かに動脈硬化が進んでいます。放置すると私たちの人生にどれくらいの具体的な影響が出るのでしょうか?
💡 放置すると「健康寿命」が約3.5〜5年短縮するおそれ
大規模な疫学調査(Framingham Heart Study等)の長期追跡データによると、中高年期に高コレステロール血症や高血圧などのリスク因子を放置し、心筋梗塞や脳卒中などの血管疾患を起こした人は、起こさなかった人と比べて「元気に自立して過ごせる期間(健康寿命)」が平均で約3.5〜5年短縮すると報告されています(※喫煙や糖尿病が重なると最大10年近く短縮するリスクもあります)。
厚生労働省の調査でも、日本人が要介護(寝たきり等)になる最大の原因は脳卒中や心疾患といった「血管の病気」です。
💡 適切な治療・管理で「元気な時間」を取り戻せる
逆に、お薬や生活習慣の改善によってコレステロールを適切にコントロールし続けた場合、将来の重大な血管事故を30〜40%抑制し、健康寿命を約2〜4年延伸する効果に相当すると推計されています。
コレステロール治療の本当の目的は、単に「検査用紙の数字を良くすること」ではありません。「60代・70代になっても、脳梗塞や心不全で倒れることなく、自分の足で元気に旅行に行ける『健康寿命』を3年、5年と延ばすこと」にあるのです。
4. 治療の基準や目標値は「人それぞれ」違います
「コレステロール値がいくつになったら薬を飲むべきか」という基準は、一律ではありません。患者様一人ひとりの持病やリスクに応じた個別の目標値(管理目標値)が設定されます。
【分類】
二次予防
対象となる方:過去に心筋梗塞や脳梗塞などを起こしたことがある方
管理の考え方:再発を防ぐため、非常に低い数値まで厳格に下げます。
一次予防
対象となる方:これから血管疾患を予防する方
管理の考え方:年齢、性別、血圧、血糖値、喫煙の有無などを総合的に評価し、目標値を設定します。
決して「数値が高い=全員がすぐに一生お薬」というわけではありません。リスクが低い場合は、食事や運動などの生活習慣改善から開始することも多くあります。
まとめ:自己判断で中断せず、まずは専門医にご相談ください
コレステロールの治療において一番危険なのは、「痛くないから」「ネットで下げなくていいと読んだから」と自己判断で放置・通院を中断してしまうことです。
「お薬を飲み続けるのが不安」
「食事療法でどこまで下がるか試してみたい」
「自分の場合、将来どれくらいリスクがあるのか知りたい」
そのような疑問や不安があれば、どうぞ遠慮なくお聞かせください。当院では、血管や心臓の専門医として、最新の医学的エビデンスに基づきながら、患者様一人ひとりの将来の健康を見据えた最適なアドバイスを行っております。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. コレステロールの薬(スタチンなど)は、一度飲み始めたら一生やめられないのですか?
A. 一生飲み続けなければいけないとは限りません。
お薬の目的は、動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中を防ぐことです。食事療法や運動療法、体重管理によって数値が改善し、血管事故のリスクが低いと判断できれば、医師の指示のもとでお薬を減量・中止できるケースもあります。
ただし、自己判断で突然やめてしまうと数値が跳ね上がりリスクが高まるため、必ずご相談ください。
Q2. 食事制限や運動だけでコレステロールを下げることはできますか?
A. 生活習慣の改善で下がることもありますが、体質や遺伝的要因が強いケースも多いです。
コレステロールの約7〜8割は体内で作られており、食事から吸収されるのは約2〜3割です。そのため、厳しい食事制限や運動を行っても十分下がらない場合があります。特に遺伝が関係する「家族性高コレステロール血症」や、すでに動脈硬化が進んでいる方の場合は、お薬を併用することが最も安全で確実な予防策となります。
Q3. 健康診断で「LDL(悪玉)コレステロールだけが高い」と言われました。症状はありませんが受診すべきですか?
A. 症状がなくても、ぜひ一度ご受診ください。
悪玉(LDL)コレステロールが高い状態の怖さは、「痛みも症状もなく静かに動脈硬化が進む(サイレント・キラー)」点にあります。症状が出た時には「心筋梗塞」や「脳梗塞」といった重大な状態になっていることがほとんどです。
当院では、頸動脈エコー検査などで「現在の血管の硬さ・プラークの有無」を直接確認し、お薬が必要かどうかも含めて一人ひとりに合った管理計画をご提案いたします。
Q4. 卵やレバーなど、コレステロールの多い食品は食べない方がいいですか?
A. 完全に取り絶つ必要はありませんが、摂りすぎには注意が必要です。
以前は「食品からのコレステロール摂取」が厳しく制限されていましたが、現在は「体内で作られる割合の方が大きい」ことがわかっています。ただし、脂質異常症と診断されている方の場合は、コレステロールの多い食品や飽和脂肪酸(脂身の多い肉やバターなど)の摂りすぎは数値を上げる要因になります。無理な我慢ではなく、バランスの良い食事指導も当院で行っております。
地域の皆様へ:百合ヶ丘・小田急線沿線で脂質異常症・生活習慣病をお悩みの方へ
当院「百合ヶ丘つだ内科心臓不整脈クリニック」は、小田急線「百合ヶ丘駅」からすぐの場所に位置し、新百合ヶ丘・生田・読売ランド前・柿生など小田急線沿線にお住まい・お勤めの皆様の「かかりつけ医・循環器専門医」として診療を行っております。
当院では、動脈硬化の進行度を直接確認できる「頸動脈エコー検査」などを備え、一人ひとりのリスクに応じた丁寧な脂質管理を行っています。健診結果の用紙をお持ちいただくだけでも構いません。どうぞお気軽にご受診ください。
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当院では、待ち時間短縮のため**Web予約(24時間受付)**を導入しております。
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(診療時間:平日 9:00〜18:30 / 土曜 9:00〜13:00)
📍 アクセス: 小田急線「百合ヶ丘駅」徒歩1分(提携駐車場あり)
【参考文献・医学的根拠】
日本動脈硬化学会 著『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』
九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野『久山町研究(Hisayama Study)』疫学調査データ
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記事監修:院長 津田 泰任(循環器専門医、総合内科専門医、不整脈専門医)
