2025年11月24日

その胸の痛み、気のせいではありません
更年期を迎えると、動悸や胸の圧迫感、胸の痛みを感じることが多くなります。 「念のため病院を受診し、心電図や心エコー検査を受けてみたけれど『心臓には問題なし』と言われてしまった…」 そのような経験をされ、今も続く症状に一人で悩まれている方も多いのではないでしょうか。
実は、更年期女性の胸の痛みは、かつては「シンドロームX」と呼ばれ、心臓カテーテルなどの精密検査を行っても原因不明とされてきました。症状の原因として逆流性食道炎などの消化器疾患も考えられますが、その背景には「微小血管狭心症(びしょうけっかんきょうしんしょう)」が隠れている可能性があります。
1. 40代・50代女性に急増する「微小血管狭心症」とは?
「微小血管狭心症」とは、心臓の太い冠動脈ではなく、そこから枝分かれる髪の毛のように細い微小血管(0.5mm以下)の機能障害によって、心臓の筋肉への血流が一時的に不足する(心筋虚血)ことで起こる狭心症です。
発症のピークは40代後半〜50代前半: 発症する年代は30代半ばから60代半ばですが、その約70%を女性が占めています。
女性ホルモン(エストロゲン)の減少が関係: エストロゲンには血管の内皮機能を保護し、血管を拡張させる大切な作用があります。更年期以降にこのホルモンが低下すると、血管を保護する作用が少なくなり、心臓に微小な循環不全を起こしやすくなると考えられています。
また、この年代は家庭や仕事など、人生において様々なストレスがかかる時期でもあり、心身のデリケートな問題が重なることで発症のリスクが高まります。
2. 症状の特徴:一般的な狭心症との違い
微小血管狭心症の症状は、以下のように多岐にわたるのが特徴です。
胸の痛み・締め付け感
息が詰まる感じ(息苦しさ)
背中の痛み、胃の痛み、吐き気
顎(あご)や左肩への放散痛
一般的な狭心症は「数分」で痛みが治まることが多いですが、微小血管狭心症の場合は数分から、長いときには数時間に及ぶこともあります。
3. 正しい診断のために:当院の検査アプローチ
微小血管狭心症の診断は、無症状の時に行う通常の心電図だけでは非常に困難です。「患者さまが実際に胸の症状を感じている時の心電図」を確認する必要があります。
当院で行う「長時間の心電図検査(ホルター心電図)」
日常生活を送りながら24時間の心電図を記録する「ホルター心電図検査」を行います。検査中にいつもの胸部症状を感じていただくことで、その瞬間の心電図変化を確認し、的確な診断を下します。 その他、心エコー検査や血液検査を行い、他のご病気が隠れていないかを丁寧に見極めて(除外診断)いきます。
4. 治療法と「ニトロが効かない」という盲点
治療には、主に血管を拡げる「カルシウム拮抗薬」というお薬が用いられます。
症状が多い方: 症状の発現を予防するために、定期的にお薬を継続して内服することをおすすめします。
頻度が少ない方(数ヶ月に1度など): 症状が起きたときのために、亜硝酸剤(ニトロ)の頓服を選択することがあります。
⚠️ 【受診時の注意点】ニトロが効かない=狭心症ではない、とは限りません ニトロの頓服は、微小血管狭心症の患者さまの約半数には無効である場合があることが知られています。「ニトロが効かないから心臓の病気ではない」と誤解され、消化器科や精神科を転々としてしまうケースも少なくありません。専門医による正しい判断が必要です。
5. 将来の重大なリスクを防ぐために(医学的エビデンス)
微小血管狭心症は比較的「予後は良好(命に関わることは少ない)」と言われてきましたが、近年の医学研究によって、放置してはならないリスクがあることが分かってきました。
💡 医学的エビデンス(参考文献)
2021年に発表された欧州心臓病学会の論文において、微小血管狭心症を適切に管理しない場合、将来的に心筋梗塞や脳卒中、心不全など、重大な心血管イベントを発症するリスクが高まることが示されています。
対象論文: Microvascular Angina: Diagnosis and Management
掲載誌・年月: European Cardiology Review (Eur Cardiol), 2021 Dec 2;16:e46.
更年期以降は、コレステロールや血圧が高くなりやすい時期でもあります。これらの生活習慣病をきっちり管理・治療していくことが、微小血管狭心症の予防と治療において極めて重要です。また、喫煙や日々のストレス、急激な寒さなども血管を収縮させるリスクとなるため注意しましょう。
結び:一人で悩まず、循環器・不整脈の専門医へご相談ください
「検査で異常がないと言われたけれど、やっぱり胸が苦しい…」 それは、更年期のせいだけではなく、心臓の微小な血管からのサインかもしれません。
当院(百合ヶ丘つだ内科心臓不整脈クリニック)の院長は、循環器および不整脈の専門医です。女性特有の胸の痛みや不安に対して、お一人おひとりの症状に寄り添いながら適切な検査と治療を行います。
当院は小田急線「百合ヶ丘駅」南口から徒歩1分(クリエイト・ゆりストア3階)にあり、お仕事帰りや買い物のついでにも通いやすい立地です(駐車場18台完備)。 また、WEB問診を導入しておりますので、受付で詳しい症状を周囲に聞かれることなく安心して受診いただけます。まずはお気軽にWEB予約よりご相談ください。
