2026年5月05日

はじめに
「心臓が一瞬飛ぶような感じがする」「胸の奥がドクンと跳ねる」 このような症状を感じたことはありませんか?これは「心室期外収縮」という、不整脈の中でも非常によく見られる現象かもしれません。
当院は不整脈専門のクリニックとして、開院以来多くの「動悸」に悩む患者様を診察してきました。私自身もこの病気に悩み、治療を受けた一人です。今回は、専門医としての見解と、一人の患者としての実体験を交え、受診の目安についてお話しします。
心室期外収縮とは?なぜ起こるのか
通常、心臓は規則正しく電気信号を送ることで拍動していますが、心室期外収縮は、予定よりも早いタイミングで心室(心臓の下側の部屋)から電気信号が出てしまう状態を指します。
主な原因: ストレス、睡眠不足、疲労、加齢、アルコール、カフェインの過剰摂取など。
自覚症状: 胸の違和感、圧迫感、一瞬詰まる感じ、脈が飛ぶ感覚。

心室期外収縮とは?「放置していいもの」との違い
心室期外収縮は、心臓の本来の規則正しいリズムとは別に、心室(心臓の下側の部屋)から早いタイミングで電気信号が出てしまう状態です。
多くは命に関わらない「良性」のものですが、エビデンス(医学的根拠)に基づくと、以下のケースでは注意が必要です。
1日の総心拍数の10〜15%以上(約1万回以上)発生している
心機能(ポンプ機能)の低下が見られる
2回、3回と連続して発生(連発)している
これらを放置すると、自覚症状が乏しくても、将来的に「頻脈誘発性心筋症」という心不全に近い状態を招くリスクがあることが研究で示されています。
実は、私(院長)も同じ「心室期外収縮」の患者でした
不整脈を専門とする私ですが、実は以前、強い心室期外収縮に悩まされていました。
最初は「少し疲れているだけだろう」と様子を見ていましたが、次第に食後や就寝前、安静にしている時でも胸が詰まるような感覚になり、仕事中も動悸が気になって集中できない日々が続きました。
「薬が効かない」というもどかしさ
まずは薬物療法を試みましたが、残念ながら私には十分な効果が現れませんでした。専門医でありながら、「いつまでこの不快感が続くのか」という不安や、薬の副作用への懸念を抱く患者様と全く同じ立場を経験したのです。
決断したアブレーション治療
最終的に、私はカテーテルアブレーション治療を受ける決断をしました。 実際に自分が治療を受ける側になり、手術室に入る時の緊張感や、今でも時々胸が詰まる感じを自覚しますが、術後に「あの不快なドクンが減少した」時の嬉しさは忘れられません。
この経験があるからこそ、私は患者様に「ただの不整脈ですから大丈夫です」と事務的に伝えるのではなく、その裏にある「生活の質の低下」や「漠然とした恐怖心」に寄り添いたいと考えています。
当院でできること:不整脈専門クリニックの強み
一般の内科や健康診断の「数秒間の心電図」だけでは、不整脈の本当の姿は捉えきれません。当院では私の実体験に基づき、以下のような診療を徹底しています。
徹底した可視化: 24時間ホルター心電図で「1日に何回起きているか」を正確に把握します。
心エコー検査: 心臓の形や動きに異常がないか、隠れた心疾患がないかを即座に確認します。
最適な治療の提案: 経過観察で良いのか、薬物療法か、あるいは私のようにアブレーション治療を検討すべきか。ガイドラインに基づきつつ、患者様のQOL(生活の質)を最優先に考えます。
まとめ:その「ドクン」を安心に変えるために
当院では地域の皆様の「心臓の悩み」を解決できるように取り組んでおります。 「これくらいの症状で受診してもいいのかな?」と迷う必要はありません。
「最近、回数が増えた気がする」
「検診で指摘されたが、どうすればいいか分からない」
「薬を飲んでいるが、あまり良くならない」
かつて私自身が感じたあの不安を、皆さまには長く抱えてほしくありません。専門医として、そして経験者として、あなたの不安を「安心」に変えるお手伝いをいたします。
どうぞお気軽に、当院の不整脈外来へご相談ください。
患者様とのQ&A
Q1:心室期外収縮は、放置すると突然死につながることはありますか?
A: 多くの場合は良性で、直ちに命に関わることは稀です。しかし、心筋梗塞の既往がある方や心機能が低下している方の場合は、危険な不整脈(心室頻拍など)に移行するリスクがあります。自己判断せず、一度は専門医によるリスク評価を受けることを強くお勧めします。
Q2:コーヒーやお酒は控えたほうがいいのでしょうか?
A: カフェインやアルコールは交感神経を刺激するため、期外収縮を誘発しやすくなります。私自身も治療前はコーヒーを控えていました。完全に断つ必要がないケースも多いですが、症状が強い時期は摂取量を調整し、ご自身の体がどう反応するか観察することが大切です。
Q3:アブレーション治療は痛いですか?また、入院期間はどれくらいですか?
A: 局所麻酔と鎮静剤を使用しますが、効果の程度により手術中に痛みを感じることがあります。しぐに執刀医へ申し出ていただければ麻酔薬の追加などで対応してもらえます。入院期間は手術を受けられる医療機関により様々です。通常、2泊3日程度の入院で治療可能です。術後の経過が良ければ、退院後すぐに日常生活に戻れます。
Q4:健診で「経過観察」と言われましたが、受診すべきですか?
A: 健診の心電図はわずか数秒間の記録です。1日のうちで「いつ、どのくらい」不整脈が出ているかは分かりません。私のように「薬が効かないほど頻回」なケースや、自覚症状が強い場合は、たとえ健診で経過観察と言われていても、24時間心電図(ホルター心電図)で詳細に調べる価値があります。
参考文献・エビデンス一覧
当院では、以下の国際的な医学的根拠(エビデンス)に基づき、精密な診断と治療方針の決定を行っております。
心室期外収縮の頻度が心機能に与える影響についての研究
論文タイトル: Left Ventricular Dysfunction Induced by Ventricular Premature Complexes
著者: Baman TS, et al.
掲載誌: Journal of the American College of Cardiology (JACC)
内容: 1日の総心拍数のうち24%以上が期外収縮である場合に心機能低下のリスクが極めて高いこと、また10%以上でも注意が必要であることを示した、この分野で最も引用される論文の一つです。
リンク: https://www.jacc.org/doi/full/10.1016/j.jacc.2005.08.036
アブレーション治療による心機能回復の有効性について
論文タイトル: Radiofrequency Ablation of Premature Ventricular Complexes and Subsequent Improvement in Left Ventricular Function
著者: Takemoto M, et al.
掲載誌: Journal of the American College of Cardiology (JACC)
内容: 頻回な心室期外収縮に対してアブレーション治療を行うことで、低下していた心機能が有意に改善することを証明した研究です。
リンク: https://www.jacc.org/doi/full/10.1016/j.jacc.2004.11.050
日本循環器学会による公式ガイドライン
資料名: 不整脈非薬物治療ガイドライン(最新版)
内容: 日本国内におけるカテーテルアブレーション治療の適応基準や推奨度が詳細にまとめられています。
リンク: https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2018_Kurita_Nogami.pdf
注:医学・医療は日進月歩であります。2026年現在において心室期外収縮では放置して良いとされる基準や、治療が必要な基準が研究によって明らかにされています。当院ではこれらの論文(エビデンス)をベースに、私自身の治療経験も踏まえ、一人ひとりに最適な治療をご提案しています。
当院(川崎市麻生区百合丘)は高血圧・不整脈などの循環器専門疾患をはじめ、「内科のかかりつけ医」として風邪などの体調不良、糖尿病などの生活習慣病、甲状腺疾患などの内分泌疾患のご相談まで幅広く対応しております。体調のことで気になることがあれば当院までご相談ください。
